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「海と夕日と彼女の涙 ストロベリーフィールズ」 [映画(2006)]

この『海と夕日と彼女の涙 ストロベリーフィールズ』(太田隆文監督)を「好きだ」と言うのには少々照れがある。初恋の相手に告白するような甘酸っぱさ(ハァ?)、そんな感じだ。大林宣彦監督作品『さびしんぼう』を観た時も同じような気持ちを抱いた。この映画を「好きだ」と言うのが何故か恥ずかしかった、そんな感覚が蘇る。

主人公の夏美(佐津川愛美)はいじめられっ子で友達がいない。唯一の楽しみは父の形見の8mmカメラ。ひょんな事で彼女をいじめるグループのリーダーである理沙(芳賀優里亜)、学級委員の美香(東亜優)、そして夏美の3人で、クラス一の暴れん坊少女・マキ(谷村美月)が出場することになった柔道の全国大会へ応援に行くことになる。大会の日、マキと応援の3人を乗せた用務員の車はトラックと衝突し、夏美を残して全員死んでしまう。

天国に向かう階段の途中で、下界の夏美の声を聞いた少女3人は幽霊となり現世に戻ってくる。しかし彼女達の姿が見えるのは夏美だけであった。再会も束の間、死神が現れ、幽霊の3人は死亡時刻から48時間しかこの世に留まれない事を告げる。3人は死亡時刻が異なるため、美香、理沙、マキの順で、この世からいなくなる事が分かる。

与えられた時間は僅かしかない。幽霊3人は想いを遂げる事ができるのか。また夏美は彼女達に思い出を作らせてあげることができるのか…

以上が主なストーリーの発端。これを縦軸とすると、4人それぞれの家庭の話を横軸として、そこに彼女らの兄貴分で元ヤンキーの坊主・鉄男(波岡一喜)、教師(伊藤裕子、並木史朗ら)や理沙の取り巻きが絡み、4人の少女を中心に広がりをみせた物語が展開する。

泣いた、気がついたら泣いていた。ここぞ、という泣き所ではない場面でも泣けてしまった。

途中、4人がばらばらになり、それぞれの思い出の場所、人に会いに行く、回想を交えた台詞なしの場面から、彼女たちの悲しみ、愛惜、後悔といった感情が溢れ出して一気に僕の胸に迫り、知らない内に涙がこぼれた。その後はもう涙が止まらない。彼女たちの痛切な気持ちが伝わっているので、観客(僕)も深い悲しみを抱えたまま、4人と行動を共にするのである。決して仲良くなかった4人が運命共同体となることで芽生えた友情も、僅かな時間で終わりを告げる。花開き損ねた友情…。友達3人のため身を粉にする夏美であったが、運命は容赦ない。最後は生きなくてはならない宿命と託された希望が彼女の糧となる。

近年、この映画ほど深く「生きること」と「死ぬこと」を見つめた映画があっただろうか。これほど魂が揺さぶられる作品に出会えることは、滅多にないことである。主役の少女達の尋常じゃない切迫感は演技を超えたリアリティがあり、切実な気持ちがダイレクトに伝わってくる。この映画の紹介記事にはファンタジーと書かれているが、そんな生易しいものではない。ファンタジーの姿を借りて現実の無常さを突きつけた問題作である。

東京では渋谷のイメージフォーラム1館で、しかも朝10:45から1回限りのモーニングショーと厳しい条件であるが、ぜひ多くの人に観てもらいたい作品である。

 


 

この映画は、キャスト、音楽、映像も本当に素晴らしいのだが、ここまで書くと長編になってしまうので、続きは次回書きます。


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アートフル ドジャー

 この頃、自分で選んだDVDをハズシテばかりで何か良い映画ねかな~と丹下さんのブログ、チェックして良かった!。いや~本当、儲けた。夏に、時かけをタイミングを逸して見なかったら、ここんとこ、見る作品、見る作品はずしてばっかで・・・。いや~助かりました!。
by アートフル ドジャー (2006-10-07 23:29) 

丹下段平

この頃よく感じるのですが、今一番駄目なのがアメリカ映画界じゃないかと思うんです。ハリウッドのプロデューサー主導の作品って本当につまらない。たとえ予算が少なくて豪華さに欠けたとしても、作家の想いが伝わってくる非アメリカ映画の方がよっぽど心に残る。意識はしていなかったのですが、最近はアメリカ映画を観る機会が明らかに減っています。ですからお薦めも(この映画も含め)日本映画を中心とした非アメリカ映画が多いです。この映画をご覧になるなら、渋谷ですからハシゴして『トリノ、24時からの恋人たち』もご覧になってはいかがでしょうか。
by 丹下段平 (2006-10-08 02:53) 

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